コトリちゃんとめぐみさん


めぐみさんと出会った2012年、私の誕生日に贈ってくれた手作りのケーキ。

とりごえ まり
石川県金沢市生まれ。金沢美術工芸大学(商業デザイン専攻)卒業。絵本の作品に『月のみはりばん』(偕成社)『名なしのこねこ』『ぼくのへやのりすくん』「しんくんとのんちゃん」シリーズ(アリス館)『ももんがモンちゃん』(学習研究社)『ハリネズミのくるりん』『くるりん はじめてのおつかい』(文溪堂)『ロバのポコとうさぎのポーリー』(童心社)など多数。
めぐみさんとの絵本『コトリちゃん』では、文章を担当。めぐみさんが制作途中だった絵には加筆し、最終ページの絵は自らが描き下ろすことで、絵本を完成に導いた。
http://blog.torigoe-mari.net/


めぐみさんとの出会いは、2012年のこと。ウレシカ(その約2年後に二人展を開催するショップ&ギャラリー)のサイトでめぐみさんの作品を見た私は、自分には描けない世界観に惹かれました。
やがてツイッターでつながり、お互いのつぶやきを読むようになりました。そんなある日、iPhoneの画面をいつの間にか誤って触り、何も書いていないツイートをめぐみさんに送るというハプニングが。すぐにメッセージでそのことを謝ったのが、初めての会話だったように思います。いつだったかな……とメッセージを遡ってみると、2012年の4月でした。まだ丁寧語での会話で、いま見るとふふっ……と笑ってしまいます。
その偶然の出来事のおかげで、私たちはいろんなことをツイッターのメッセージ、やがてはメールやLINEで語るようになりました。

そのうち「いつか会いたいですね!」と話すようになり、それが実現したのが2012年10月。ドキドキしながら訪れためぐみさんの部屋は、めぐみさんの絵の世界そのもので、かわいい雑貨や素敵な家具が並んでいました。お昼にアドボという煮込み料理をごちそうしてくれて、「おいしいね~、お料理上手だね~」と話していくうちに、めぐみさんはもともとは中野のカルマというお店で料理をしていたのだと知りました。私は画家としてのめぐみさんと出会ったので、その経歴をあまり知らなかったのです。お菓子を作っていることは知っていたけれど、料理人だったとは!と驚いたことを覚えています。
その日はお互いのことをたくさん話しました。当時私も闘病中だったのですが、病気を抱えながらもしっかりと自分らしく生きているめぐみさんにとても励まされ、辛い治療を乗りこえられたのは、めぐみさんのおかげだと言っても過言ではありません。

さて、出会いのエピソードが長くなりましたが、ここからが二人の共作絵本につながる話です。
その日それぞれの人生を語り合ったあと、私からめぐみさんにお願いをしました。
「いつか私が作ったお話に絵を描いてくれませんか?」と。
めぐみさんは目をまるくして、「えーっ! 私は絵本をいつか作りたいというのが夢だったの。私にできるのかしらって不安もあるけど、でもなんでも挑戦してみたいと思ってる」
そう言って、めぐみさんはとてもうれしそうに引き受けてくれました。

本格的に二人の絵本のことで動き出したのは、2013年に入ってからのこと。私の闘病中いつもメールで優しい言葉を送ってくださったり、お花を贈って私を元気づけてくださっていた佼成出版社の編集者さんに、めぐみさんに絵を描いてもらって絵本を作りたいと思っていることを伝えました。そして、めぐみさんの個展に足を運んでいただいたのです。編集者さんはめぐみさんの絵をとても好きになってくださり、9月にめぐみさんの家ではじめての打ち合わせをし、絵本作りがスタートしました。

写真はめぐみさんと出会った2012年、私の誕生日に贈ってくれた手作りのケーキ。
ももいろミントケーキ。届いた箱を開けたとき、感動して泣きそうになりました。

2013年の絵本制作開始と並行して、私もめぐみさんもご縁があるウレシカで同年11月に二人展をすることが決まっており、「絵本の布石の展示になるといいですね」と話していました。
その二人展「トビラ」では、めぐみさんと私がそれぞれ絵のタイトルを考え、それに対してふたりが絵を描く『往復書簡』という試みをしました。私から出したタイトルのひとつが「コトリちゃんと小鳥さん」。絵本のことを考えはじめて出したタイトルでした。
(めぐみさんの「 コトリちゃんと小鳥さん」は2月4日からの二人展「そら」でも展示されます)

二人展の期間中は何度かめぐみさんと在廊し、駅の近くまで一緒にゆっくり歩いて帰りました。「まりさんと歩くと、不思議と呼吸が楽なのよ」と言いながら歩くめぐみさんが、いまでもすぐそこにいるような気がします。

絵本の文章を私が完成させてめぐみさんの手に渡ったのは、2014年の2月。
年に1日だけ目を覚ます小さな女の子コトリちゃんの話を書きました。たった1日しか起きていないのに、コトリちゃんはその時間を誰かを喜ばせるために使います。
なぜそんなお話が頭に浮かんだのか……いま思うと、コトリちゃんはめぐみさんに似ているのかもしれません。めぐみさんは自身の体が辛い中で、いつもまわりの人に気配りをし、喜ばせることを考えている……そんな優しい人でした。そして私自身も、病気をしたことで、1日がどんなに大切かということを感じていました。

その年の秋発売を目標にめぐみさんはラフを描きはじめましたが、なかなか思ったようには進まず、その年の発売は断念。冬から春へのお話なので、来年の秋発売に延期してゆっくり描いてもらいましょうとなりました。
その後めぐみさんの病状は想像以上に早く悪くなり、2014年の冬、もうあまり長くは生きられないかもしれないとめぐみさんから聞くことになります。
めぐみさんに残された限られた時間の中で、やりたいことをやってもらいたいと私は思い、「めぐみさんの体が、絵を描くための力を出せる時間内で、もしこの絵本の絵じゃないものを描きたいと思ったら、それはそれで仕方ない。命の使い方はめぐみさんの自由です」と伝えましたが、めぐみさんは「まりさんの書いたかわいいお話に私が絵を描いて、ひとつの絵本が誕生するのをたのしみにしてるのよ!」と言ってくれました。その言葉がとてもうれしくて、めぐみさんががんばってくれるなら、いつまでも待つつもりでした。
でも残念ながら、すべての原画を描き終える前に、めぐみさんは空の上へ旅立ってしまったのです。

絵本出版をたのしみにしたまま、そして絵本を世に残すという夢をかなえられずに旅立っためぐみさんは、きっとそれが心残りだったと思います。私はなんとしてでも絵本を出版させることを、最後のお別れの日にめぐみさんに誓いました。
そして、編集者さんと相談をしながら、描きかけだった絵本の原画には私が加筆し、原画が描かれていなかったページはアトリエにあっためぐみさんの過去の描きおろし作品の一部分を使い、最終ページは私が描きおろし、ページ構成や文章を少し変えることで、『コトリちゃん』は出版できることになりました。

また、絵本が出版されるタイミングで2回目の二人展をウレシカで開催することも、1回目の二人展をしたときからの約束でした。その約束も2月4日~15日に果たします。

とりごえまり + やまぐちめぐみ 二人展
「そら」
(同時開催:絵本『コトリちゃん』原画展)

2016年 2月4日(木)~2月15日(月)
9日(火)休み open:12時~20時
URESICA(ウレシカ)shop & gallery

写真は、2013年の二人展「トビラ」の会場ウレシカでの写真。
今年の二人展ではこうして並んで写真を撮れないのがとても寂しいですが、 きっと空の上からめぐみさんも見守ってくれることでしょう。
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